2024年7月4日(木)、東京・日本橋でインターステラテクノロジズ株式会社(IST)の事業報告会が開催されました。ISTは観測ロケット「MOMO」で日本の民間開発ロケットとして初めて宇宙空間(高度100km)到達に成功したことで知られています。現在、同社は地球低軌道への小型人工衛星投入が可能なロケット「ZERO」を開発中ですが、2021年7月に「MOMO」打ち上げの同月内2回成功を達成して以来、ここまで3年間ロケットの打ち上げを行っておらず、その間にも様々なニュースはあれど「派手なニュースがあまりない状態」でした。そのため、6月に発表された新経営体制の報告を含め、現状を伝える機会として本報告会を実施することになったとのこと。報告会では活動概要を伝える以下の動画も上映されました。
事業報告会については様々なメディアで記事化されています。
「OURSTARS」で目指す「衛星通信3.0」
そうした中、筆者的にもっとも印象に残ったのは超小型人工衛星のフォーメーションフライトで実現を目指す「OURSTARS」の現状報告でした。
「OURSTARS」はISTの垂直統合ビジネスの要素である人工衛星事業。超小型人工衛星による衛星通信ビジネスの実現を目指しています。
特徴的なのは衛星通信の実現方法。衛星通信の実現方法としては、従来からある大型衛星によるものや、近年話題のスペースXのStarlinkなどで知られる複数の小型衛星によるコンステレーションによるものがありますが、ISTのOURSTARSはこれらとは異なります。それが「超小型衛星コンステレーション&フォーメーションフライト」で、小型衛星によるコンステレーションでは小型衛星1機で担っている機能を、大量の超小型衛星を連携させることで巨大なアンテナを持つ衛星として機能させるというものです。アンテナの大きさは数十〜100m相当となる見込みで、人工衛星搭載のアンテナとして最大級とされる「きく8号」のアンテナ(約17m×19m)も(仮想的にとはいえ)大幅に上回るものとなります。
人工衛星のアンテナが大型化すると地上側のアンテナは小さくて済み、デバイスの小型化が可能になります。インターステラテクノロジズではOURSTARSで実現する衛星通信の革新を「衛星通信3.0」と呼んでいます。
さて、OURSTARSの超小型衛星コンステレーション&フォーメーションフライトの実現に向けてキモとなる技術がフォーメーションフライトのための制御技術です。磁力によって衛星間の距離をいい具合に制御するというものですが、この方法は宇宙空間ではまだ実証されておらず、現在は衛星を模擬した地上の設備で今後の低重力環境での実験に向けた準備がすすんでいるとのことです。映像では3つの衛星間で制御されていました。
超小型衛星コンステレーション&フォーメーションフライトはかなり魅力的な事業である一方、技術的に相当チャレンジングなものにみえます。ですが、衛星を小さくすることで次期ロケット「ZERO」のサイズでも衛星通信に必要なユニット数を早期に打ち上げることができるようになる目論見があるのかもしれません。
ただ、今回の事業報告会では触れられていませんでしたが、OURSTARSの事業には衛星通信の他にも「超低高度衛星による地球観測サービス」や「宇宙実験用衛星サービス」もラインナップされています。当初の話でも衛星通信は難易度の高いものに位置付けられていたので、まずは他事業から始めていくのかな、とも思ったのですが、開発リソース的に並行して進められるのかという懸念もあったり。
いずれにしても今後の展開が楽しみな事業報告会でした。
【追記】
インターステラテクノロジズのnoteで当日の書き起こしと資料が公開されました!
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