宇宙の活用方法というと宇宙からの観測や観測データの活用、宇宙資源開発など様々なものがありますが、「エンターテイメント」もメジャーな用途のひとつです。間接的には映画や小説、アニメ等の作品の舞台としての活用が身近ですが、もっと実際の宇宙を使ったエンターテイメントも多く計画されています。
というわけで、本記事では主な「宇宙とエンターテイメント」をテーマにした企業や試みをまとめました。
株式会社ALE
宇宙デブリ対策技術や大気観測なども手掛ける株式会社ALEですが、なんといっても「人工流れ星」で有名です。この人工流れ星による宇宙エンターテインメント事業「Sky Canvas」は残念ながら当初の予定よりも遅れているものの、現在(2021年6月)は2023年の実現を目指しています。
ガンプラ搭載超小型衛星「G-SATELLITE」
東京オリンピックにあわせてすすめられた「機動戦士ガンダム」の「ガンダム」と「シャアザク」のプラモデルを搭載した超小型衛星「G-SATELLITE」を打ち上げるプロジェクト。すでに2020年3月7日に打ち上げられ、同3月9日には国際宇宙ステーション(ISS)に到着しています。 予定では4月下旬ごろにISSから宇宙空間に放出され、軌道を周回しながら東京オリンピックを宇宙から応援するはずでした。
ですが、オリンピック延期に伴い、 超小型衛星「G-SATELLITE」 の放出も延期されたようで、以下の記事以降、続報は確認できていません。
もし今もISSにあるとしたらバッテリーやアンテナなどの状態が気になるところです。ここ(ISS)まで来たのだから、オリンピックとは関係なしにでもぜひ実現してほしいですね。
株式会社Yspace
VRによる月面でのスポーツ体験などの宇宙VRコンテンツの開発や、最近では月から打ち上げる超小型ロケットの開発も行っています。月面やりなげ(Yarinage MOON)のPV動画はこちら。
実際の月面データを使用しているのがリアルです。
株式会社amulapo
「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」など、XR技術を用いた体験型の宇宙コンテンツを開発・提供しています。エンターテイメントを介した教育的なコンテンツとしては宇宙を学べるオンラインアカデミーや衛星データを用いた「星みくじ」など、様々なコンテンツを生み出す研究者集団です。
株式会社ASTROFLASH
ASTROFLASHは色や明るさを自在にコントロールできる人工衛星の開発を目指しています。人工衛星から発せられる光は地上からも肉眼で見える視認でき、地上からコントロールできるのだそうです。人工衛星と光といえば、天文観測への影響が懸念されますが、ASTROFLASHの人工衛星は都市部上空でのみ視認できるように運用されるとのこと。2020年12月には資金調達も行い、現在、初号機を2021年度中に打ち上げることを目指しています。
Space Entertainment株式会社
Space Entertainment株式会社が目指すのは「小型人工衛星のフォーメーションフライトによる世界初の宇宙エンターテイメント」とのこと。人工衛星のサイズやフォーメーションフライトをどのように活用するか(地上からの鑑賞か、もしくは別の形のなにかか)など、具体的な計画が見えていないので、どのようなものになるかはまだわかりません。情報が出てきたら改めて紹介します。
ところで、人工衛星のフォーメーションフライトといえば、インターステラテクノロジズ株式会社の100%子会社であるOur stars株式会社も超小型人工衛星のフォーメーションフライトを計画しています。こちらは通信衛星としての活用です。
Sony Space Entertainment Project
ソニーの宇宙エンタテインメントプロジェクト。人工衛星に地上からコントロールできるカメラを搭載し、これを活用したエンタテインメントの創出を目指しています。「エンターテイメント」や「エンターテインメント」ではなく、「エンタテインメント」というところがすごくソニーっぽいです。(「ソニー・ミュージックエンタテインメント」も「ソニー・インタラクティブエンタテインメント」も「ソニーピクチャーズエンタテインメント」も、すべて「エンタテインメント」なのです)
「宇宙とエンターテイメント」の課題
ここで紹介した以外もまだまだありそうですが、いったんここまでで…。
実はこの「宇宙観光企画」でも、昔(2005~6年ごろ)、今は亡きアストロリサーチという会社に魚眼レンズの3Dカメラとマイクを搭載した「宇宙観光衛星」を提案したことがありました。一応ビジネスモデルっぽいものも併せて提案したのですが、想像以上に人工衛星の開発費用がかかることがわかり、断念したことがあります。
その時にとても悩んだのが、これを活用したコンテンツや体験に、果たしていくら払ってもらえるだろうか、という点でした。当時に比べ、今は人工衛星の開発コストや打ち上げコストが下がり、ハードルは多少は低くなったものの、当然同じ課題はあります。他の用途であれば「衛星データ活用で○○が××することにより●●円コストを削減できます(または売上が増加します)」のように数字で表しやすいこともありますが、エンターテイメント用途ではなかなか誰もが納得する数字は前例が乏しいだけに作りにくい部分があります。また、コンテンツや体験に魅力を感じてもらうためにはマーケティングをどうするかといった問題も避けられません。
「宇宙とエンターテイメント」の効用
とはいえ、一方で多くの消費者にとってエンターテイメントはGPSや天気予報よりも、「宇宙を直接楽しめる」機会であり、宇宙に関する様々な取り組みへの理解を深めるきっかけにもなります。
その意味で「宇宙とエンターテイメント」は(コンテンツとしての「はやぶさ」を例に出すまでもなく)宇宙業界全体にとっても応援団を増やす有効な手段となるはずです。
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