「Make:」という自作愛好者のための雑誌/Webメディアがある。主に電子工作を軸に思い思いのアイデアを形にする人々やその手引きが紹介されている。「オープンソース・ハードウエア」という概念を知ったのもMake:だった。海外が本家だが、日本での活動も盛んで昨年までは年に2回「Make: Tokyo Meeting」と題したイベントが開催されていた。今年は春の開催をパスして秋に大きめのイベントを計画しているそうだ。
そんなMake:の雑誌版で発売前から気になっていたのが今回の号「Make: Magazine Vol.11 DIY SPACE 個人に開かれた宇宙開発」だ。Amazonで予約していたのだが、先日堀江貴文氏となつのロケット団メンバーによるロフトプラスワンでのトークライブ会場で期せずして購入することができた。
■個人・中小企業による宇宙開発の今がわかる
宇宙に興味があり、自分でもなにかやりたいと思っている人には絶対のオススメだ。宇宙に興味はなくて、モノ作りに興味があるという人も全力で買いだ。挑戦しがいのあるフィールドがすぐそこにあることを知るだろう。
宇宙開発と一口に言ってもその紹介分野は多岐にわたっている。ロケット、超小型衛星といった可能とはいえ少々値の張るものから自作の八木アンテナで衛星からの電波をキャッチするといったものまで様々だ。
また、個人的にオススメなのは、アメリカの民間宇宙産業で挑戦を続ける「ロケット・メン」達を紹介した記事だ。アメリカの民間宇宙開発のメッカであるモハーベ(モハビ)空港周辺の宇宙ベンチャーがどのような志でどのように宇宙開発を行っているのか、興味深く、刺激になる。そのひとつ、築60年の木造ハンガー(格納庫)で開発を行っているXCORエアロスペースでインタビューを受けていた髭面のゲリー氏に見覚えがあった。たぶん、私が2005年秋にモハーベの同社に伺ったときにいろいろと解説をしてくれた人のような気がする。こんな髭面の人で「ジェリー」と名乗っていた。アポなしで突然押し掛けたにも関わらず、時間を取ってハンガーの中を見せてくれたことを覚えている。私はその時にアメリカの宇宙ベンチャーに初めて直接触れたことで、民間企業による宇宙開発が単なるロマンではないことをリアルに感じることができたのだ。(翌年にSpace Xの工場を見学した時は民間企業のスケールやフェーズにも色々あるということを実感したりもしたが…)
民間企業による宇宙開発の動きは日本でもある。本書には堀江貴文氏率いるロケット開発チーム「なつのロケット団」のロケット開発エンジニアである牧野一憲氏が会社員を辞めてロケット開発を始めてから、堀江氏と出会い、先日の打ち上げ実験までの道のりを語っている。牧野氏はNPO法人有人ロケット研究会の理事でもある。
2010年のはやぶさの快挙によって今、日本でもにわかに宇宙への興味が増しているように思える。一方で、東日本大震災の影響により「金がかかる『イメージ』」のある宇宙開発に対するネガティブな心証も強くなることが予想される。そうした中、きちんとビジネスとして個人や中小企業が宇宙事業に取り組める環境を創りだす道筋を示すことにより、経済を発展させる機運となるよう、働きかけていくことが必要だ。
ぜひとも、多くの人に読んでもらい、宇宙ベンチャー予備軍が増えればと思う。
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