2009年8月にスペースシャトルで打ち上げられ、2010年4月に山崎宇宙飛行士の帰還とともに地球に帰ってきた「種」が行方不明になっていることが5月13日に発表されてから約1週間経つが、未だに見つかっていないという。
■行方不明の”宇宙の種”いまだ見つからず、24日まで捜索 – JAXAが会見
24日まで探して、なければ再打ち上げ(スペースシャトルSTS-133での打上げ、STS-134での回収)を検討するというが、その場合、宇宙空間に種が「滞在する」帰還は約8ヶ月から約2ヶ月(予定)と大幅に短くなる。もし、滞在期間が成果に影響するならば、これは単にやり直しという以上の影響が出てきてしまう。
・・・のだが、そういえばなぜ宇宙に種や酵母などを打ち上げようと考えたのだったか。
かつて、向井千秋宇宙飛行士が宇宙に行ったときに「宇宙バラ」を持ち帰ったが、その時は「地上とは香りが違う」といわれることもあった。宇宙を旅した酵母を使った「土佐宇宙酒」も心なしかおいしい気がした。同じく宇宙に行った菌を使った「宇宙ヨーグルト」は「地上のものよりまろやか」と表現する人もいた。
しかし、実際に食べてみた感想としては、正直それほど違うとも感じなかった。
多くの場合、数カ月の宇宙滞在による「宇宙線の影響」なるものによって、地上のモノとそうそう違うものはでてこないのではないか。
もちろん、当事者はそれをわかっている。
今回のプロジェクトを進めている株式会社リバネスのサイトを見ても、例えば大豆については「宇宙に行った地大豆を使うことで、地域の食育活 動・科学教育を促進し、地域産業の活性化ひいては自給率の向上へ寄与します。」(同社サイトより)と書かれており、大豆そのものの変化やその検証を目的にはしていない。前述の記事の記者会見にマーケティング部長職の方が出席されたことを見ても、プロジェクトの性格はわかる。
つまりこれは、宇宙に思いを馳せるきっかけとなるアイテムを提供する「ロマンビジネス」なのだ。時間を越えた思い出の品を見ながら思い出話に華を咲かせるように、宇宙に滞在した品々は距離を越えて宇宙と自分たちをつないでくれる。
だから、それを消費する自分たちも、それを認識して楽しめばいい。宇宙に滞在させることでなんらかの変化や効用がでるものもあるかもしれないが、それはデータで確認できるものであることが重要だ。
こんな話をするのは、今後、化粧品や健康食品など、効用の大きな部分が個人の感覚によって占められる商品において、宇宙が実際に効用のあるものとして期待されすぎることを懸念しているためだ。気分を楽しむ分にはいいが、過度の期待と幻滅は宇宙への取り組みのイメージ自体に悪影響を及ぼす。
宇宙開発を取り巻く、宇宙の周辺ビジネスが健全に発展していくために気をつけなければならない点だと考えている。
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