先日、宇宙旅行のおみやげについて意見交換する機会があったので、改めて考えてみた。
宇宙旅行のおみやげというと何があるだろうか。
本当であれば月の石でもほしいところではあるのだけれど、今予定されている宇宙旅行は行っても月周回どまりで月面に降り立つことはできない。国際宇宙ステーション(ISS)でおみやげを買おうにも今のところお土産屋さんはない。
とすると、月並みではあるけれど、宇宙になにかを持っていって「宇宙に行った○○」としておみやげにするくらいか。
宇宙旅行を予約したことを話すと「宇宙に何を持って行きたいか?」と聞かれることがあるが、チョコレートや苗木や種やラーメンなど、すでにたいていのものは持っていかれた感があり、「これをもって行きたい!」という強い目的はあまり持っていなかった。(旅行の様子を映像で記録してくれるサービスもあるのでカメラを持っていく必要もない。)
が、それはあくまで自分がなにを持って行きたいかという話。
宇宙に行くのであれば、(夏休みがある学生ならまだしも、)サラリーマンであれば結構な有給を使わないといけない。会社の人や家族、友人などにもみやげ話だけというわけにもいかないことも多いだろう。とすれば「おみやげ」を宇宙で入手できない以上、地上から持っていくしかない。
では、なにがいいだろうか。
聞いたことがある話としては花の種を持って行き、「宇宙に行った種」として配り、育ててもらうというアイデアがある。確かにロマンチックではある。現にスペースシップワンではフライト時に記念の苗木を積んでいった。
しかし、おみやげというものは本人には特別なものでも他の人にはそうでもないということがよくあるのも事実だ。特に記念グッズのようなものはその傾向が強い。もらったほうはたとえ興味がわかなくても捨てるわけにもいかず、困ったことになる。もちろん趣味を同じくする人にとってはこの上ないおみやげになるだろうが、そういったものは大量に必要なわけではない。
そこでもう一度よく考えてみたい。
「本当に『おみやげ』がほしいと思っている人はいるのだろうか」
これは自分に照らしてみるとよくわかる。特別な人や、同じ趣味を持つ人からのおみやげでない限り、大概のおみやげは時間が経つにつれて「モノ」としての価値しか持たなくなるのではないだろうか。おみやげのボールペンは「ボールペン」として用をなしているから持っていても困らないのであって、でかい置物のようなものは価値がわからない人には邪魔以外の何者でもないだろう。
そんなことを考えると、おみやげとしては当然のごとく、ある結論にたどり着く。
いわゆる「消えモノ」、つまり、食べ物だ。
食べ物のおみやげは(無難な食べ物である限り)もらって困らないものだ。困らないだけでなく、おみやげを食べる時間はみやげ話をするのにちょうどいい。
そしてなにより、楽しい気持ちだけを残し、あとはなにも残らない。
具体的にどんな食べ物がよいのだろうか。
多くの人に配ることを考えると食べ物そのままを持っていくのは難しいだろう。「宇宙旅行」のおみやげであれば、配り先も10人やそこらではないだろうからだ。
「あの人に配るならあの人にも…」なんてことに気をもみたくはない。余裕があるくらいの数を調達して、みんなにいきわたるかどうか心配しなくていいようにしたい。
であれば、クッキーはどうだろうか。おみやげとしてはベタといえるほどのスタンダードだが、よくよく考えるとこれがうまい具合にはまりそうなのだ。
ポイントは3点ある。
まず、材料。これの一部を持っていく。
とはいっても小麦粉(薄力粉)は難しいのではないか。クッキーの大部分を占めているだけに相応の量が必要になるからだ。キロ単位で持っていくのは少々不安でもある。
そこで、持っていきたいのはベーキングパウダーだ。クッキーの歯ざわりを決める大事な材料にもかかわらず必要な量は小麦粉の約40分の1。100g持っていけばクッキー600個分くらいになる。これなら積荷の負担にもならない。
次に時間。
クッキーならパンなどと違い、生地を寝かせる必要がない。大概、宇宙に行くのはツアーの最終段階だ。宇宙から帰還した後は帰るまであまり時間がない。クッキーなら宇宙から帰ってきてからすぐにパティシエが作業に取り掛かり、翌日に帰るときまでには焼きあげることができるだろう。宇宙に行った余韻の中で受け取り、持ち帰ることができる。(重いので試食分だけ受け取り、あとは送ってもらってもいい。)クッキーは比較的日持ちがいいのもお土産には最適だ。
そしてデザイン。
クッキーは加工しやすく、デザインの幅が広い。「ただのクッキー」にしないために大いに凝るべきところだろう。乗った機体や旅行会社やフライトなどによってデザインを変えれば、思い出を促す触媒になるのではないか。
もし私がデザインするなら、自分が見た風景をクッキーにしたい。
青い地球と、昼なのに黒い空。地上では見ることのできない風景をクッキーで表現したい。
とすると黒い空はココアパウダーとして、青い地球はどうしようか。
これなんか今持ってるイメージに近いのだけど、どうせならいくつか青を用意して、行った後で実際のイメージに近いものを選んでもいいかもしれない。これも話のネタのひとつになる。
・・・どこかの洋菓子屋さん、一緒にやりませんか?
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