日本人は宇宙旅行が好き?嫌い?

宇宙旅行に関するアンケートは去年くらいに2つほど紹介した。最近あんまり見てないなぁと思っていたら、こんなアンケート結果のニュースが・・・。

金があっても宇宙は行かない!? アジア諸国で宇宙旅行熱も、冷めてる日本人

なんと!
アジア諸国での宇宙旅行熱にもかかわらず、日本人の多くは宇宙旅行に対して比較的消極的だとのこと。オーストラリア、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾、タイ、インド、インドネシア、フィリピンの10カ国、合計5,000名への調査で全体の約66%が宇宙旅行に関心を示す一方、日本人の過半数である52%が「無関心」という結果が報告されている。これは調査国の中でもっとも多い。最低の関心度だ。

これはなぜだろう。

簡単に「国が宇宙の魅力と宇宙開発の意義をアピールしないからだ」とはいえるかもしれない。でもそれは他力本願に過ぎるだろう。重要なのはここから何をするかだ。

とはいえ、宇宙旅行の魅力がきちんと語られていないのは事実だと思う。そして、なぜ語られていないかといえば、宇宙旅行に関わる人は(私も含めて)頭のどこかに「宇宙旅行はみんなが当然に持っている夢」という「誤解」が存在するからなのではないか。つまり、わざわざ語らずとも「本当は誰でも宇宙に行きたいと思っているはず」であるから、「宇宙旅行の魅力は説明不要」であるという無意識の前提を持ってしまっているのではないか。

筑波大学の鈴木一人助教授は「宇宙は人類の夢、ではない」といった。すべての人類が共通して持っているわけではないということを認識し、それが理屈ぬきに実現に向かえるわけではないということを知らねばならない。「将来の夢」を現実にするためには「現在の現実」からの様々な社会的プロセスが必要なのだ、と。

宇宙旅行に関わる者はともすればこの現実を忘れがちである。無理もない。「2001年宇宙の旅」を持ち出すまでもなく、宇宙はこれまでずっと未来に対する「憧れ」の象徴であった。それが現実になろうとしているのだから「行きたくないわけがない」と漠然と考えてしまうのである。もちろん、行きたい人ばかりではないことはわかってはいるが、本質的には皆行きたいものだと感じてしまう傾向があるように思う。宇宙旅行についての説明の多くが、「宇宙旅行が身近になった。現実になった。」ということのアピールに重点が置かれている現状には、そうした意識の背景があるのかもしれない。しかし、これは一般の商品でいえば「買えるようになりましたよ」と言っているだけに等しい。だから、宇宙旅行に興味がある人にはアピールできるが、興味がない人にはとたんに手段を失ってしまうのである。

これでは多くの人が宇宙旅行に行く未来はそれこそ夢のまた夢だ。

一方、「幸せを目の前にすると人は臆病になる」ともいわれる。状況が自分にとって前向きの方向に向かおうとすると、それに対して抵抗する反応が体に起こることがあるのだそうだ。そう考えると、憧れが現実になろうとしている現在、このアンケートの結論は当然の結果なのかもしれないと思えてくる。…のは、これもまた宇宙旅行に関わる者の自己満足だろうか。(ちなみにこの反応は、本屋に行くとトイレに行きたくなる、という「青木まりこ現象」を説明するひとつの仮説でも用いられている)

いずれにしても日本国内で宇宙旅行がまだ現実のものとして受け入れられていないのは事実だ。「宇宙旅行の魅力は説明不要」という無意識の前提を捨て去り、もう一度アピールすべきサービスとして位置づけ、夢の実現へのプロセスを積み重ねて行くことが日本の宇宙旅行産業にとって重要であるのは間違いない。

参考:
宇宙旅行に関する調査を考える。「宇宙旅行に関するアンケート」
宇宙旅行、いくらならOK?何をしたい?何を食べたい?「2010年宇宙の旅アンケート 」結果

アンケートはシンガポールでCNNが制作したCNN Future Summitの一環として行われた。以下はCNN Future Summitの宇宙旅行関連ページ
CNN Future Summit「Space tourism: Trip of a lifetime」

このアンケートの調査会社である英Taylor Nelson Sofres(TNS)社からのプレスリリース(PDF)
BEYOND THE FINAL FRONTIER? POLL FINDS ONE THIRD OF ASIANS
WOULD BE SPACE TOURISTS

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