宇宙にモノをもっていく

宇宙に行くロケットや人工衛星、そしてミッション・コマンダーが搭乗するロケットプレーンXPのようなサブオービタル機(高度100kmの宇宙空間との間を往復する宇宙機)の活用法として、まずもっともシンプルに考えられるのは「なにかモノを宇宙にもっていく」というものだろう。

既にある具体例としては

宇宙を旅した酵母から作られた宇宙酒
・小惑星探査機「はやぶさ」の入りターゲットマーカー(着陸の目印)に刻印された88万人の署名
遺骨などを宇宙にもっていく宇宙葬

などがある。これらに共通していえるのは、宇宙になにかをもっていくという行為自体がサービスの主となっている点である。宇宙酒は「宇宙を旅した酵母からできた」という点が重要なのであって、味などへの影響はさほど問題ではない。同様にはやぶさのターゲットマーカーはもちろん署名がなくてもターゲットマーカーとして機能するし、そもそもセレモニーである葬儀については、宗教的な意味合いを考慮しても今のところ「宇宙葬」である必然性はない。

では、こうした活用は意味がないかといえば、そうともいえない。

例えば、形のないモノに価値に見出すという点で多くの人に共通の体験といえば「思い出の品」だろう。思い入れのある品は、他の、それがたとえ全く同じ品物であっても代えがたいものだ。それほどの価値をその品に与えているのは、その品に込められた「物語」に他ならない。その物語に知る者にとっては繰り返しその物語を「体験」するきっかけとなる。
物語が個人的なものを離れ、より多くの人に共通の思い入れになれば、それは「ナポレオンが○○した××」や「あの人気アイドルが□□した△△」として価値をもつことになる。

宇宙を旅した品物は、宇宙に思い入れをもつ人にとって、宇宙に思いを馳せるきっかけとなるに違いない。

最近では日本の宇宙ベンチャー企業、アストロリサーチ社が小型人工衛星を使った個人向け私物打ち上げサービスの開始を発表している。「1億円」という価格設定について、個人的には少し高すぎる機がするが、前述の考え方からすれば、人によっては全く違う印象を持つのだろう。

もうひとつ。こうしたサービスの登場は(たとえ購入しなくても)多くの人の目を宇宙に向けるきっかけにもなる。その意味では先の「1億円」という価格設定は印象に残りやすい、うまい価格設定ともいえそうだ。

「宇宙に品物を持っていく」サービスは、その単純さから、一般にあまり受け入れられないのではないかという人もいる。しかし、私は非常にシンプルでわかりやすいサービスだからこそ、様々な展開が考えられ、かえって受け入れられやすいのではないかとも考えている。

さて、自分はどんな物語をもっていこうか。

参考記事:
宇宙に思い出打ち上げ 1億円

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