20日、「第2回社会人学生コラボ」を傍聴するためお台場へ。
「第2回社会人学生コラボ」は、ディベートとディスカッションを通して「日本の宇宙開発は必要か否か」を考えるイベントだ。参加者はメーリングリストや前日からのグループ合宿で議論を深めて当日の本番に臨むというなかなかにタフなもの。
筆者がこれまで参加した宇宙系イベントともっとも異なる部分は午前中に行われたディベートだ。普通、宇宙系イベントでは当然ながら宇宙旅行肯定の立場で様々な議論が行われるが、このイベントではディベートの形式をとり、宇宙開発「必要派」と「不要派」が議論を戦わせる。もちろん「不要派」も実際は必要派である人であり、しかも本気で勝ちにくるので、突かれるとイヤな勘所を知っている。「必要派」にとってはもっとも戦いにくい相手だ。
議論のポイントは地球資源、公共事業の優先度、教育、衛星情報のそれぞれについて行われた。宇宙旅行と直接にかかわる部分はなかったが日本での宇宙関連産業の難しさを感じる議論となった。
そして結果はなんと「不要派」の勝利!
とはいえ、筆者自身もジャッジシートでは「不要派」勝利としていた…。決め手は説得力。論理はそれなりに組み立てられているのだが、「日本の」宇宙開発は必要かといわれると国策などの裏づけがなく、国としての優先度が見えにくい。JAXA樋口理事の総括では日本国内の議論にとどまらず。国際協力としての視点など、問題の位置づけによって考え方は大きく変わるだろうとのコメントがあった。
午後は会場の参加者も交えてのディスカッション。「50年後を見通して、今私たちがすべき宇宙開発とは」をテーマに「宇宙政策(宇宙普及活動)」「地球観測衛星」「民間宇宙開発(宇宙旅行)」についてディスカッションを行う。筆者も参加させてていただいた。
「民間宇宙開発」ではやはりというか、安全性が宇宙旅行ビジネス発展のための課題にあげられた。これは宇宙旅行者のターゲティングに関わってくる点だと思う。
時々いわれることだが、宇宙旅行に行きたいという人には2種類ある。「あらゆる場所に行きつくしてしまった、旅行好きな人」と「純粋に宇宙に行きたい人」だ。
前者はいくらこれまで冒険に満ちた旅行をしていても、それは「旅行」である限り一定の安全は確保されているものだと思っている。戦場には旅行に行かないのと一緒だ。宇宙という場所に大きなモチベーションがあるわけではないので、こうした人はお金があっても個人が持つ「安全」の基準に達しない限り宇宙には行きたくないと考える。今、こうした人たちが宇宙旅行を予約している現状は、単にまだ宇宙旅行で事故が起きていないために「たぶん安全」と仮判断しているに過ぎないと考えられる。つまり、なにか危険の兆候が見えた段階で一気に冷え込む可能性もあるのだ。
対して後者の「純粋に宇宙に行きたい人」が持つ安全性への期待値は前者ほど高くない。筆者自身の気持ちで言えば、(もちろん、安全性の確保に全力を尽くすというサービス提供側の姿勢があってのことだが、)保障されなくても自身が判断すればいいことだと思っている。こうした人は多少の危険の兆候が見えてもすぐに退くことはない。せっかく手に入れたチャンスなのだから、その兆候を自身で検証し、もう一度判断をし直すだけだろう。その結果、多くの人は残るはずだ。当初のターゲットはこちらが先になるのではないか。
宇宙旅行産業を着実に発展させるためには、こうした安全性の向上にあわせたターゲットのフェーズ分けが必要なのだと思う。
「第2回社会人学生コラボ」はその必要性を考え直すいい機会になった。
コメント
>chickenさん
イベントお疲れ様でした。
また、懇親会ではありがとうございました。
好き勝手な意見を述べてしまいましたが、参考にしていただけたのであればうれしいです。
ブログも拝見しました。
学内での普及活動、気をつけてがんばってくださいね(笑)また見に行きます!
chickenです、こんばんは。社会人コラボ後の懇親会にて、お隣で鳥人間だお財布ケータイだと騒いでいた者です(^^;
改めてこちらのサイトにお邪魔して、「何か見たことあるぞ・・・」と感じ、思い返してみました。
・・・よくよく考えてみればディスカッションテーマ「民間宇宙旅行」について調べていた時に一度お邪魔していました。
ディスカッションで会場から出して戴いた意見初めて気づいたのが、
自分が「宇宙好きが宇宙好きの世界だけでやっていては話は広がらないのでは」と考えたとき、
それならもう宇宙好きの中で市場を開拓することは完全にうち切る、という方向にしか頭が回っていなかったという事でした。
いくら技術が上がったり保険制度を用意しても、打上経験を重ねることなしに「非宇宙好き」が求める安全性を満たすのは限界がありますもんね。
ホットな話題の、貴重なコメント、大変参考になりました。ありがとうございました!