「第2回宇宙旅行シンポジウム」レポート

さる2007年3月3日(土)、東京は航空会館にて「第2回宇宙旅行シンポジウム」が開催された。

参考:
2007年3月3日(土) 第2回宇宙旅行シンポジウム開催!

2005年に第1回が開催されてから2年ぶりの開催となり、その間に日本でも大手旅行会社が宇宙旅行の取り扱いを始めるなど大きく動いている。こうした中で、第2回となった本シンポジウムでは今後の発展に必要な指針や現状の紹介のほか、宇宙旅行の実現に必要な法規整備や運行に必要なパイロットの養成、そして宇宙機開発や事業を念頭に置いた、より実際に則した講演内容となった。

ここでは各講演を少しずつだが紹介していきたい。

■基調講演「『2055年宇宙万博』で月面パビリオン建設へ」
山根一眞(ノンフィクション作家)

山根氏は宇宙旅行の発展にはもっと具体的なイメージが必要という。例えば、月面遊園地のようなレジャー施設でどういう楽しみ方があるかが示せれば、より将来的な宇宙旅行の魅力を伝えられるということだ。とはいえ、いわゆる単純な楽しみだけではなく、宇宙飛行士が地球を見た時に「ナイアガラのような感動が脳内を駆け巡る」体験も、より人間が本来的に持つ文化的な欲求に応えるものとして魅力となるだろうとのこと。
山根氏の講演内容で印象に残ったのは各国の宇宙での活動に関する部分の「なぜ宇宙で戦争をしなければいけないのか」といった言葉だった。地上の論理に縛られるが故の考えであるという指摘に共感できた。同様のことを宇宙観光企画でも書いている。(参考:「宇宙兄弟喧嘩」)
そして、以前の講演で紹介されていた「2055年宇宙万博」のコンセプトについて、今回も紹介されていた。愛知万博のときに計画されていた第1回会議は結局実施されなかったらしいが、より具体的な未来を提案する氏の活動に今回も非常に興味をそそられる内容だった。

■「Xプライズ後の宇宙旅行をめぐる動き」
大貫美鈴(SpaceFrontierFoundation)

2004年10月にスケールド・コンポジット社のスペースシップ・ワンが宇宙をゴールとした賞金レース「X PRIZE」を獲得して以後の動きが紹介された。ヴァージン・ギャラクティック社の宇宙旅行参入や、ビゲロー・エアロスペース社の宇宙ホテルの状況、ロケットプレーン・キスラー社をはじめとした各宇宙ベンチャーの活動状況など、一線を知る氏ならではの充実した報告であった。

■「米国における商業宇宙旅行の育成と法規整備」
橋本安男(日航財団)

宇宙旅行がビジネスとして成り立つためには技術的な課題だけでなく、それを取り巻く法的な整備も必要だ。米国では産業としての発展を阻害しないよう制限をかけすぎないように、しかし、最低限の条件を定めることで、より堅実に宇宙旅行を育てようとしている。橋本氏の講演ではこうした動きが紹介された。
氏が最後に述べた、「人が行ってこそ、ビジネスは大きくなる」との言葉が宇宙旅行の可能性を表しているようで印象的だった。

■「我が国の宇宙パイロット養成を考える」
高野開(日本航空機操縦士協会)

高野氏の講演では現役パイロットに対して行われた宇宙パイロットに関するアンケート結果が紹介された。当然だが安全面への要求は大きく、重要な課題であることが再認識された。また、現在では宇宙旅行を実現する機体のイメージが定まっておらず、結果としてばらつきの多いアンケートとなってしまったとのことだった。これも現在の状況を示す、ひとつの結果に違いない。
ところで、氏によればアメリカのパイロットに比べ、日本のパイロットは宇宙への想いがあまり感じられないという。アメリカのパイロットは現在の宇宙機ベンチャーの動きもよく知っており、将来のひとつの方向性として捉えているようだ。日本ではそうした考えを持つ人は少ないという。

私としては宇宙パイロットもそうだが、ロケットレーシングリーグのようなスポーツパイロットもぜひ日本から出てほしいと願っている。

■「再使用ロケット実験機から有人飛行へ」
小川博之(JAXA)

宇宙旅行の動向を踏まえながら実験を積み重ねていくことでリスクを低くしていくことが大事であるという。そうした中で、少しずつ成功を積み重ねていくことで需要を生み、さらに次のステップに進むというスパイラルが利用的であるとの見解が示された。

私の感想としては、おそらく現在の延長線上にゴールがあると確認されたものについてはそれがよいだろう、と感じた。ただ、本当のゴールは現在とは非連続な場所にある場合もある。その可能性を残しながら、バランスよく進めることが大切なのだと思う。

■「企業からみた弾道飛行の事業の可能性」
志村康治(三菱重工)

宇宙観光旅行は20年で1兆円規模の市場となり、値段は約3分の1になるとのデータを示した。その上で、有人飛行の実現には飛行経験を積んで技術を高める必要を各国の例を示しながら論じた。

宇宙旅行の市場予測についてはさまざまなものがある。宇宙観光企画でも一度予測してみる必要があるかもしれない。

講演の後はパネルディスカッションが行われた。会場からの発言もあったのだが、本シンポジウムには講演者だけでなく会場にも各キーマンが終結しており、一つ一つの発言がひとつの講演のように充実したものになっていた。

そんな状態なので、当然ながら予定時間を大幅にオーバーしてシンポジウムは終了した。会場では思い思いの場所で名刺交換や意見交換が行われ、にぎやかな時間がしばらくの間続いていた。

次回はまだ未定とのことだが、今度は2年後ではなく、もっと近くに行ってほしいと思う。

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