2つの意味で「世界最高のトイレ」!?世界初、民間人のみの宇宙飛行ミッション「インスピレーション4」の見どころ

宇宙

2021年9月15日(日本時間9月16日)にフロリダ州・ケネディ宇宙センターからの打ち上げで始まった宇宙飛行ミッション「インスピレーション4」。世界初の民間人のみの宇宙飛行ミッションとして知られていますが、他にも様々な試みが行われています。本記事ではそうした中から今後の宇宙旅行時代に向けて特に注目したいポイントをご紹介します。

世界初!宇宙飛行士の同行なしで地球周回軌道へ

左からクリス・センブロスキーさん、サイアン・プロクターさん、ジャレッド・アイザックマンさん、ヘイリー・アルセノーさん

これまでも民間人が地球周回軌道まで行く宇宙飛行をしたことはありますが、全て宇宙飛行士が同行していました。今回は初めて宇宙飛行士ではない民間人のみで宇宙飛行を行うミッションとなります。が、それだけでなく、今回は「本当に普通の人」が宇宙に行くことになったというのがポイントです。

中でも筆者が注目しているのはクリス・センブロスキーさん。他の3名も普通の民間人ではありますが、少し背景が異なります。

今回のリーダーで出資者であるジャレッド・アイザックマンさんはこれまで自費で宇宙飛行をした人たちと同様、宇宙に行くことを自らの意思で選び、宇宙飛行に向けた覚悟をしてきました。ジェット機の操縦はエア・ショーに出るほどの腕前です。

サイアン・プロクターさんは地質学の教授で、父親はNASAの技術者でアポロ11号のフライトをグアムの地上局から支えました。そうしたことからサイアンさんも宇宙飛行士を目指し、2009年のNASA宇宙飛行士募集ではファイナリストまで残っています。

つまり、この2人は今回のミッション参加前から宇宙に行くことを希望していた人です。

ヘイリー・アルセノーさんはそうした意味では宇宙を目指していた人ではありません。が、幼少期に骨肉腫を克服し、現在は当時治療を受けたセント・ジュード小児研究病院に勤めるという稀有な経歴を持っています。そのため、「希望」を象徴するクルーとして選出されました。また、地球周回軌道に到達した世界最年少であり、世界で初めて義足を装着して宇宙に行った人でもあります。

しかし、クリス・センブロスキーさんはそうではありません。米空軍を退役し、現在はロッキード・マーチンに勤務。ワシントン州で妻と2人の娘と暮らしている、ごく普通の男性です。クリスさんは前述のセント・ジュード小児研究病院に寄付をすることで宇宙飛行の抽選参加権を得て当選し、宇宙飛行のチャンスを得ました。ある意味、もっとも幸運なクルーです。

だからこそ最も「普通の人」といえます。クリスさんの宇宙飛行体験を追うことで今後のリアルな宇宙旅行の魅力や課題がわかるかもしれません。例えば、重力加速度の訓練ではひとりだけ酔ってしまい最後には吐いてしまっていました。そのせいか、ジェット機に同乗する訓練でも青いエチケットを握りしめていました。宇宙に行く前には全員酔い止めを飲むことになっていますが、クリスさんが無事か、本気で心配です…。

重力加速度訓練に臨むクリス・センブロスキーさん。この後、彼に試練が訪れます。

世界初!国際宇宙ステーションに「寄らない」オービタル宇宙旅行

地球周回軌道まで行く宇宙旅行を「オービタル宇宙旅行」といいます。1990年に宇宙に仕事として「出張」したTBSの秋山豊寛さんの目的地は旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」でした。その後、2001年に初めて自費で宇宙旅行に行ったデニス・チトーさんからこれまで、地球周回軌道まで行く人の目的地は国際宇宙ステーション(ISS)でした。宇宙に行った民間人は必ず宇宙ステーションに行っていたのです。

「インスピレーション4」は世界で初めて、宇宙ステーションに寄らない宇宙飛行となります。

せっかく宇宙に行ったのだから国際宇宙ステーションに行ってみたい、という人も多いと思いますが、「寄らない」ことで、訓練を短くすることができるなど、将来的に宇宙旅行のハードルを下げられるメリットもあります。

そして今回のミッションでいえば、ISSとのドッキングに使われていたクルードラゴン宇宙船の先端部分が空いたため、ここに宇宙を全天周で見渡せる透明なドーム型のキューポラを設置できました。これが次に紹介するポイントにもつながってきます。

(2つの意味で)世界最高のトイレ

インスピレーション4では国際宇宙ステーションよりも高い高度575km付近の軌道を回っています。これがまずひとつ目の「最高」です。

そしてもうひとつは「トイレの場所」。クルードラゴン宇宙船の先に設置されたキューポラ部分がトイレになるのだそうです。ジャレッド・アイザックマンさんはあるインタビューで以下のように語っています。

“It’s not a ton of privacy. But you do have this kind of privacy curtain that cuts across the top of the spacecraft, so you can kind of separate yourself from everyone else,” billionaire tech entrepreneur Jared Isaacman, who is financing (and commanding) the mission, told Insider in July. “And that also happens to be where the glass cupola is. So, you know, when people do inevitably have to use the bathroom, they’re going to have one hell of a view.”

https://www.space.com/inspiration4-spacex-crew-dragon-toilet-dome-window

「完全なものではないが、宇宙船の上部にはプライバシーカーテンがあり、これによって自分と他のクルーの空間を切り分け、隔てることができる。」(今回のミッションの出資者である)起業家でビリオネアのジャレッド・アイザックマン氏は7月のインタビューでそう語りました。「そして、そこにはちょうど(ドーム状の)ガラスのキューポラがある。つまり、トイレに行きたくなった人は、当時にとんでもなく素晴らしい景色を見ることになるんだ。」

まさに「最高のトイレ」です。キューポラ部分には「一人でしか入れない」という情報がありましたが、そういうことだったんですね。トイレが長くなってしまいそうです。

ただ、探してみたのですが、トイレの画像や具体的な配置などの情報はまだありませんでした。後述のドキュメンタリーでも会話の中で軽く「上にある」ことが触れられた程度でトイレからの景色の話は出てきませんでした。最終話のお楽しみかもしれません。(という期待)

The private Inspiration4 astronauts on SpaceX's Dragon may have an epic view … from the toilet
It's a step up from finding a bathroom on a mountain, one crewmember said.

ミッションを追ったドキュメンタリーがNetflixで配信中

Netflixではこの宇宙飛行ミッション「インスピレーション4」を追ったドキュメンタリーを配信中です。全5話のうち、本校執筆時点では打上1週間前までが含まれる第1~4話が公開されています。最終話である第5話はミッション終了後の2021年9月30日に公開予定です。

クルーに選ばれた瞬間や様々な訓練の様子などを観ているとミッションがより身近に感じられ、思わず「自分だったら…。」と考えてしまいます。ぜひ観てみてください。

宇宙へのカウントダウン: ミッション・インスピレーション4 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
訓練から打ち上げ、そして帰還まで。世界初となる民間人乗組員のみの宇宙飛行計画、インスピレーション4を余すことなく映し出すドキュメンタリー。

参考

Inspiration4 - Home
The First All-Civilian Mission To Space
Bitly

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