via Travis Baldwin – San Francisco and San Jose, California – On-Orbit Coffee Cup Presentation
残りが少なくなったコーヒーカップ・・・ではない。少ないのには理由がある。
これは無重力空間向けのコーヒーマグ。実はこれ、割とすごいことなのだ。
皆さんも無重力状態で飲み物が水玉になって空中に浮かんでいたりする映像をみたことがあるだろう。それを飲んでいる様子は実に楽しげではあるが、宇宙船や国際宇宙ステーションの中ではこれが曲者。小さな水玉が精密機械をショートさせるようなことがあれば大惨事につながりかねない。
だから、無重力状態で液体を飲むときは基本的に密閉されたパックからストローで飲む形になる。
ちょうどこんな風に。
via Travis Baldwin – San Francisco and San Jose, California – On-Orbit Coffee Cup Presentation
でも、宇宙でもホッと一息つきたい時もあるだろう。そんなコーヒーブレイクにストローはちょっと味気ない。
そこで登場したのが先のコーヒーマグだ。
via Travis Baldwin – San Francisco and San Jose, California – On-Orbit Coffee Cup Presentation
このコーヒーマグ、中身が入っていない状態を上から見るとこんな風になっている。奥が狭くなっているのがポイントで、このためにコーヒーは表面張力によって漏れ出てこない、というわけだ。
ただ、単に漏れ出てこないだけでは飲むことができない。無重力状態では逆さにしても(そもそも「逆さ」という概念がないが)コーヒーは出てこない。
これを解決するのがコーヒーを飲む方の内側についているV字型の溝。こうすることで、毛細管現象によりコーヒーが口元まで上がってくるのだ。毛細管現象(または「毛管現象」)とは液体が細い管の中を自然に上昇する現象のこと。インクに布や紙をつけると次第に染みて上がってくるアレだ。
これによって無重力状態でもカップからコーヒーが飲むことができる。
これはプラスチックフィルムでできたカップを使った実験でも立証されている。以下の動画は実際に飲む様子を記録したものである。
しかも、このカップは中空になっていて大量生産しやすく、重ねることもできるのでかさばらない。スペースの限られている宇宙空間では大きなメリットだ。
左利きの人は使いにくいかもしれないが、溝のついている側を逆にするか、いっそ取っ手を両側につければ解決しそうだ。そうすれば1種類で済む。多少子供用っぽくなるが・・・。
via Travis Baldwin – San Francisco and San Jose, California – On-Orbit Coffee Cup Presentation
地上とまったく環境の違う宇宙旅行中は、違う体験も価値である。とはいえ我慢しなければならないことも多く、地上と同じようにできたらと思うこともあるだろう。
宇宙旅行が旅行として豊かなものになっていくためには「コーヒーを飲んでリラックスする」という感覚的価値が重要になっていきそうだ。
ちなみにこのカップは重力のあるところでは本来の力を発揮できない。地上でのコーヒーブレイクは宇宙観光企画オリジナルマグカップをどうぞ(←宣伝)
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