「そうだ、宇宙へ行こう。~DESTINATION SPACE~」

これまで本格的に実際の「宇宙旅行」をテーマにした本はあまり多くない。2005年発行の「宇宙の歩き方」(林公代/著)や2006年発行の「宇宙旅行ハンドブック」(エリック・アンダーソン/著)くらいだ。

そうした中、久々に宇宙旅行本が発売されたので以下に紹介したい。

これは2007年に発行された「Destination Space: Making Science Fiction a Reality」(Kenny Kemp/著)の翻訳本。2007年4月に5人目の宇宙旅行者となったチャールズ・シモニー氏が「次の宇宙旅行者」として紹介されているように、これ以前の話が中心となっている。そのため、最新の状況と若干食い違うところが出てきてはいるが、20世紀半ばの米ソの宇宙開発レースから民間宇宙旅行の実現の機運まで、歴史を追いながら変遷を知ることができる。前述の2冊は現状の説明が主であったので、そうした宇宙旅行に向けての動きを時系列で追った本誌は貴重で興味深い。ただ、文章中心の内容となったことで宇宙旅行に興味のあるライトな層にはハードルが高いかもしれない。
宇宙旅行に対する興味をいかに喚起するか。ロマン、技術、ビジネス、と、多様な側面を持つ話題だけに、ともすればターゲットが広すぎてテーマが散漫になり、ターゲットを絞りすぎればボリュームをとりにくくなる。テレビ、ネット、シンポジウム、アート、ショーイベント、紙メディア等々、ターゲット別に手段をうまく組み合わせていく必要があるだろう。中でもマンガやアニメは実績からみても、新しいものに対する理解を深める効果的な表現方法としてある。
本誌は、最近宇宙旅行に対して興味を持ち始めたという人にとって有益な1冊となりそうだ。
ただ、残念な点もある。宇宙やITに関連する用語の訳に不自然な点がいくつか見られることだ。日本語版について監修がついていなかったのかもしれない。例えば、以下のくだり。
「世界的な標準仕様」という話まで出ている。OSリナックスの宇宙バージョンだ。これは空前の出来事である。(59ページ)
これにある「世界的な標準仕様」はおそらく「グローバル・スタンダード」のことではないだろうか。併記すべきだろう。また、「OSリナックスの宇宙バージョンだ」もこれだけでは意味がよくわからない。リナックス(Linux)の基本要素部分が一定の条件下で自由に共有され、活用されていることに例えているのであれば補足すべきだ。こうした考え方は少なくとも日本ではまだ常識とは呼べないだろう。また「OSリナックス」というのも少し妙だ。日本で一般的には「リナックスOS」と記すのではないだろうか。
間違っているわけではないし、そうした箇所が多いわけでもない。惜しい部分ではあるが、良書であることに変わりはない。宇宙旅行を知るのであれば、押さえておいて損はないだろう。