前回の投稿でイベントの「第1回」が好きという話を書いたので、なかなか書けなかった「第1回宇宙デザイン会議」について第1回参加の所感を書き留めておきます。
2023年12月16日(日)、東京・目黒区駒場の東京大学駒場第二キャンパス・ENEOSホールにて「第1回宇宙デザイン会議」が開催されました。宇宙ビジネスなど民間での宇宙活用が活発化し、これからの宇宙に新たなシーンを切り拓いていくために「デザイン」の力が求められている中で、本カンファレンスは未開拓領域である「宇宙とデザイン」について焦点をあてた(おそらく)初のカンファレンスです。2023年は第1回目にもかかわらず午前中からほぼ丸1日プログラムが組まれており、そうした勢いを感じます。
プログラム内容は以下の通り。野口聡一宇宙飛行士の講演もありました。
10:30 開場
11:00 オープニングセッション第一部:宇宙生活から考える未来の宇宙UX
11:30 森智也氏講演
12:00 野口聡一氏講演12:30 昼休憩&展示デモ
第二部:宇宙産業におけるデザイナーの役割
13:30 徳山弘基氏講演
13:50 大塚成志氏講演
14:10 山下コウセイ氏講演
14:30 高野峯羽氏講演
14:50 パネルトーク「宇宙開発にデザイナーが貢献出来る事」第三部:異業種から見つめる宇宙デザイン
15:45 東大先端研 先端アートデザイン分野 吉本英樹氏/東京都立大 田中研究室 田中聡一郎氏17:00 風洞見学・デモ(~19:00)
宇宙とデザインという一見かけ離れた分野の融合に多くのデザイナーが興味を持ったようで、会場には予想以上にデザイン系の人々が集まっていました。
残念ながら後半しか参加できなかったので、断片的な感想になってしまいますが、語られていた中で印象的だったのは「民間宇宙開発においてもユーザビリティが重要である」という指摘でした。宇宙開発を一般に開かれたものにするには、訓練された宇宙飛行士だけでなく、誰もが簡単に使える機器が必要不可欠ですが、これは単なる使いやすさというメリットだけではなく、使用者が習熟するための教育コスト(時間・費用)をおさえることにもつながるという指摘は興味深いものでした。
また、「宇宙」というテーマをデザインで表現する難しさについても議論が交わされました。人々が抱く「宇宙らしさ」のイメージは千差万別で、シンプルな要素を削ぎ落としたデザインよりも、むしろ星空のような具体的なビジュアルの方が受け入れられやすい場合もある、という意見には、納得感があります。
個人的な経験でいうと、筆者が企画した宇宙の香りがする紅茶「SPACE TEA」のパッケージデザインを検討したときにこんなことがありました。宇宙をテーマにしたフレーバーティーということで、筆者は「宇宙開発」にまつわるモチーフをパッケージデザインに取り入れることを提案しましたが、デザインを担当した妻から「それでは宇宙が好きな人にしか伝わらない」との指摘を受け、まずは紅茶が好きな人に伝わるデザインで宇宙はあくまでテイストとするような形になりました。その結果、宇宙に興味のなかった方にも買い求めていただけ、「ティータイムを通して『宇宙』に時間を使ってもらう」(その結果、宇宙に興味を持ってもらう)という目的を達成することができました。
一口に「宇宙らしさ」といっても具体的な宇宙のイメージとしては「政府系宇宙開発」「民間宇宙開発」「天文」「宇宙物理学」「オカルト」など、様々な分野があります。宇宙が好きという立場で企画すると、どうしても自分が好きな分野のイメージにこだわってしまいがちです。企画の対象ユーザーも同様であればよいのですが、広いユーザー層を対象としたい場合にどうすればきちんとリーチできるのかは宇宙とは別の要素から考える必要がありそうです。
また、講演では宇宙空間でのQOL(Quality of Life)向上におけるデザインの役割についても触れられるなど、将来的に宇宙で生活する際に必須となる課題についても議論されていました。
一方、運営面では初めての開催ということで、主催者が登壇する際は会場準備もしながら登壇もこなす場面もみられ、このアットホームな雰囲気や良い意味での手作り感がかえって参加者の心を掴んだように感じました。
一部だけの参加になりましたが、それでも宇宙開発とデザインの融合は今後ますます重要になってくると感じられました。次回の開催が今から楽しみです。
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