2008年9月11日、東京・新宿の京王プラザホテルで英ヴァージングループの宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックと日本国内で同社の宇宙旅行を販売するクラブツーリズムは共同で、宇宙旅行の説明会を行った。
ヴァージン・ギャラクティック社からは副社長 営業担当取締役のスティーブン・アッテンボロー氏と旅行営業責任者キャロリン・ウィンザー氏が登壇。同社の宇宙旅行の魅力を語った。
「他の競合他社に比べて5年先に進んでいると思っている。」
アッテンボロー氏はプレゼンテーションの冒頭でそう胸を張った。現在、宇宙旅行を計画している企業は世界に多数ある。日本国内ではJTBが総代理店を務め、国際宇宙ステーションに宇宙旅行者を送り届けた実績を唯一持つ米スペース・アドベンチャーズ社、そしてアメリカ・オクラホマ州にすでに宇宙港を持ち、企業向けのチャーターフライトに強みを見出す米ロケットプレーン・グローバル社などだ。
ヴァージン・ギャラクティック社がそうした企業の中で自信を持つ根拠は、同社が2004年に世界初の民間宇宙飛行を達成した「スペースシップ・ワン」を開発した米スケールド・コンポジット社とパートナーを組み、計画を進めているという点にある。この7月には実機としての最初の成果である「ホワイトナイト2」の機体のお披露目を行った。ホワイトナイト2は乗客が乗る宇宙機「スペースシップ2」を高度15kmの地点まで運び上げる役割を持つ。スペースシップ2はそこで切り離されロケットエンジンに点火、90秒で宇宙空間にたどり着くことになる。お披露目された最初の母機は英ヴァージングループ代表であるリチャード・ブランソン氏の母親エバ・ブランソンの名前にちなみ、「VMS Eve」と名付けられた。
お披露目に際し、ブランソン氏は笑顔で「1億ドル(約100億円)投資して、ようやく機体をみることができてうれしい」と語ったという。実際に宇宙に行くスペースシップ2は70%が完成しており、2009年中の公開を予定している。
現在、すでに35カ国270名が予約している。そのうち日本からの予約者は10名。その半分が女性でこの割合は世界のどこよりも多いという。会場には既に同社の宇宙旅行を予約している平松康三氏、稲波氏らの顔も見られた。
予約者向けのお披露目イベントなどに参加した平松氏は「なにしろデザインが素晴らしい。エンジニアのスピリット、パイオニアのスピリットに触れる経験ができた」と熱く語る。稲波氏も「(VMS Eveは)ものすごく大きくて驚いた。この大きさは皆の夢の大きさも表しているのではないか」と興奮気味に当時の様子を語った。
VMS Eveは数週間以内にフライトテストを開始する予定だ。
ただし課題も多い。例えば、VMS Eveのフライトテストは12~18ヶ月を予定しているというが、安全面を含めた認可を得るには50回以上のフライトが必要になるだろう。すると多い場合は1週間に1回の割合でテストを実施しなければならない。説明会後にアッテンボロー氏に聞いたところでは、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のモハーベ空港が使われることになる。同空港はスペースシップ・ワンが宇宙飛行を達成した空港でもある。とはいえ、当然ながらヴァージン・ギャラクティック社が専有できるわけではない。空軍施設との兼ね合いもある。一部ではこの期間設定が現実的でないとみる向きもある。
宇宙旅行サービスの開始時期について、同社は説明会中でも「安全性の確認が最優先であり、テストの結果を見て慎重に検討する」と明言していない。宇宙旅行の実現はいよいよ具体性を増してきたものの、その開始時期についてはまだまだ流動的といえるだろう。
「来年、ヴァージン・アトランティック航空は日本就航20周年を迎えます。20年後には日本からヴァージン・ギャラクティックで宇宙に行けるようにできればと思っています。」
アッテンボロー氏はプレゼンテーションをそう締めくくった。
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