「Countdown to X PRIZE CUP(カウントダウン・トゥ・Xプライズカップ)」から約10日、改めて当日の様子を振り返ってみたい。
会場となったのはアメリカ・ニューメキシコ州ラスクルーセスのラスクルーセス国際空港。正直、遠い・・・。「国際空港」とはいえ、日本から乗り入れられるわけでもなく、ロサンゼルスにとんだ後、場合によっては1箇所経由してニューメキシコ州アルバカーキか、テキサス州エルパソに入り、陸路で向かうのが標準的な行き方だろう。(距離的にはエルパソからの方が近い。とはいえ、約70kmほどある。)
そんな場所ということもあり、今回、日本人にあうことはほとんどないのではないかと考えていた。しかし、実際は報道陣以外にも仕事で近くまで来ていたという方や、留学中の学生の方、X PRIZE CUPボランティアで働いている方、そして私と同様に好きで来たという方もいて、予想以上の日本人に会うことができた。
願わくば来年は(Space Adventures社と業務提携した)JTBや(Virgin Galactic社の代理店である)クラブ・ツーリズムあたりがツアーを企画してほしい。(もちろん特典付きで!)
ラスクルーセス国際空港の第一印象は「ホントに国際空港なの!?」というようなものだった。海外の空港というとターミナルがいくつもある空港しか知らないからかもしれないが、ラスクルーセス国際空港にはいわゆるターミナルと呼べるようなものは見当たらず、看板がなければ空港であることもわからないかもしれない。しかし、その代わりに広くて見晴らしがよく、X PRIZE CUPのようなイベントにはぴったりの場所のようにも思えた。
会場はテーマにあわせた横断幕が飾られたトレーラーのコンテナで緩やかに仕切られ、アポロなどの宇宙開発の歴史を振り返るゾーンから将来の宇宙事業に向かうゾーンに徐々に移行していく流れが作られている。一角には大きな地球と火星のバルーンがある。これが実に大きい。直径10メートルはあるだろうか。イベントが夕方5時までということで今回は披露されることがなかったが、このバルーンには照明が仕込まれており、夜に展示するような場合にはとても幻想的に光るようになっているのだ。地球と火星だけでなく、実は太陽系の惑星すべてがラインナップされているとのこと。すべてが並んだ様子をいつか見てみたい。
会場入り口からみて奥の一角がメインステージとなっている。
ここではオープニングからエンディングまで様々な方のスピーチやビデオ、デモンストレーションの中継などが行われていた。メインステージの横に設置された大きなスクリーンは晴天の空の下にもかかわらず十分な見易さで様々な映像を映し出していた。
オープニング、音楽とともに各方面の主要人物の言葉が映し出され、徐々に気持ちを盛り上げていく。そして驚いたのはステルス機として知られるF117が会場のすぐ上を通り過ぎるフライバイ。厳密には宇宙には関係ないような気もするが、生の迫力はやはりすごい。感動さえ覚える。
メインステージで主要な方のスピーチが行われる中、会場に目を向けてみると、すでに多くの人が集まっていた。前日に宿を探していたとき、X PRIZE CUPで満員だと断られ続けただけはある。アメリカ国内でも日帰りはきついのか、泊りがけで来ている人もいるのかもしれない。
主な出展社の様子は以下の通り。
会場内でひときわ大きいのがカナディアン・アロー。
その名の通り、空に向けて放たれるかのようにはるか宇宙に狙いを定めている。
アルマジロ・エアロスペースはテスト機「ブラックアルマジロ」のデモ飛行も披露したが、1回目のデモで着地時に機体が倒れ、2回目以降のデモは中止されてしまったようだ。しかもデモの場所は遠くて手前にコンテナが置いてあり、若干見にくかったのが残念。とはいえ、ふわりと飛び立つ様子には「お!」と思わせるものがあった。(同時に数秒という飛行時間の短さには「お?」と思わせられたが…。)(動画は別途アップ予定)
今回最もお世話になったのがロケットプレーン社。当日はフライトスーツを貸していただき、貴重な体験をさせてもらった。よく考えたらこの会場でのフライトスーツはある種コスプレといえるかもしれない。
同社の宇宙機「ロケットプレーンXP」は早期の事業実現を目指し、既存のジェット機の機体を活用している。その後の第2世代は機体の設計も含めたものになるらしい。先ごろ宇宙服のコンテストを始めたということからも、長期的には旅行者に対して「視覚デザインによる満足」という付加価値を提供するという姿勢が見える気がする。また、同社のプランには副操縦士席に乗れるオプションも検討されているという。日本ではまだマイナーな同社だが、注目したい。
スターチェイサーはイベント終盤にエンジンの噴射デモを行った。が、カウントダウン後「ボスン」という音と共に黒煙を噴き出し、見事(?)な失敗となってしまった。しかし、失敗にもかかわらず会場の様子は実に朗らかなもので、黎明期特有のおおらかさを感じた。関係者には失礼かもしれないが、この時期だからこそのいい経験をさせてもらったと思う。(動画は別途アップ予定)
XCOR(エックスコア)社のEZ-Rocket(EZロケット)は当日のデモの中で唯一すべての回を成功させた。それもそのはず、初飛行は2001年、と実績十分(?)な機体なのだ。(動画は別途アップ予定)
EZ-Rocketはロケットエンジンを積んではいるが宇宙には行けない。そのため、個人的にはロケットエンジンのテスト機の印象が強かったのだが、この度ロケットレーシングリーグの第1世代の機体(X-Racer)として採用されたことで、テスト機の枠を越えて一躍その存在感を強くしたように思う。XCOR社には今回の道中で訪問し、見学させていただいた。案内してくれたGerryさんに感謝。
忘れちゃいけないスケールドコンポジット社のスペースシップワン。現物はスミソニアン博物館にあり、会場にはレプリカが展示された。やはり写真をとっている人は一番多かったように思う。
会場にやってくるお客さんは業界に近い人というのは逆に少なく、子供から大人まで本当に普通の方が多かった。地元のFMラジオや新聞や街角で行われた広報活動の成果かもしれない。宇宙旅行事業のイベントといっても技術にスポットを当てたかしこまったものではなく、みんなが宇宙旅行に思いを馳せて楽しむお祭り的な雰囲気の中、自分もいちファンとして素直に楽しむことができた。
午後5時、宇宙旅行時代の夜明けを予感させながら Count down to X PRIZE CUP は幕を閉じた。
コメント
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